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  • 日本の神々 古代人の精神世界(平野仁啓著・講談社現代新書)感想とメモ

    本書の初版は昭和57年(1982年)8月20日、今から35以上も前になります。数々の論文・考察が引用されていて、時代の反映なのか折口信夫、柳田国男の存在感がやはり目立っている感じがします。また、出雲大社に関する事柄については千家尊統の論に負うところが多いです。

     
    本書の議論が今に通じるかどうかは私も現代の議論に詳しくないのでなんとも言えません。ただ、著者の考察に若干純朴なところを感じたせいか、全てをそのまま受け入れる気にはなりませんでした。また、折口信夫の論も推測を重ねた印象があるので心理的には距離を置いています。しかし、本書全体としては日本神道について考えるためのヒントを十分に提供しており、慎重に各論を判断した上でなら一読する価値はあるでしょう。

    以下は私なりに本書の内容をメモしたもので、自分で見返すために書いたようなものです。4章・5章が読み応えがあった箇所で、メモの量にもそれが現れています。若干私の主観が入っている箇所(「(?)」とか)もございますのでご注意願います。

    なお、未電子書籍化なのでご購入はページ下部からどうぞ。
     
     
    日本の神々 古代人の精神世界 メモ

    1章 生と死の宗教意識

    ハイヌヴェレ神話→オオゲツヒメノ神、ウケモチノ神→
    壊されやすい土偶(完全な形で発見されることは稀)(1)

    アイヌとアメリカインディアン(原文ママ)の考え→
    「動物は人間に食せられるということを悦ぶ」
    (松本信広「日本神話の研究」)→
    死と新たな生が組になっている(2)

    (1)(食物の確保)、(2)(新しい生)→土偶をこわして配布

    蛇体把手、顔面把手、甕棺葬、石棒と石柱
     
     
    2章 稲作の宗教意識

    稲作→太陽→鏡
    銅鐸は稲作のまつりに使われた?
    高床式倉庫には神がまつられていた?(折口信夫を参照)
    海の彼方の常世の国、または天から鳥が穀物をもたらした
    天から天女が穀物をもたらした
     
     
    3章 日の御子の出現

    古墳の出現→神社?

    大和の大王家は早くから太陽神を守護霊
    (岡田精司「天皇家始祖神話の研究」)、稲作の影響
    (日祀部(日奉部)、日置部(水神→河口や川の合流点)、日沈宮)

    大嘗祭(天皇の即位式):
    天皇霊(外来霊)を天皇の体に取り入れることによって
    直接にアマテラス大神の孫という関係に(折口信夫を参照)
    その年の新米が必要

    新嘗:
    母稲にすべての稲魂が集中して保持される(東南アジア)、冬至→
    (高天原ではなく)常世から来年の豊作を祝福する神が来訪?
    稲の精霊の復活が目的

    新嘗+日継→大嘗祭、日の御子は稲の精霊でもあった

    稲を高く積んだ祭場→高千穂(柳田国男「稲の産屋」)
    高天原で稲作がはじめられた→ニニギノ尊は稲の精霊

    「吾が高天原に所御す斎庭の穂を以て、亦吾が児に御せまつるべし」
    →天皇がアマテラス大神に稲の新穀を供進することが新嘗に追加
     
     
    4章 神をまつる人々

    神が人にまつることを要求する

    伊勢神宮、斎王、渡会氏、宇治氏、荒木田氏

    伊勢神宮は、土着の地方神の存在の上に、
    アマテラス大神の信仰が重ねられた
    (藤谷俊夫・直木孝次郎「伊勢神宮」)

    カモ神社(上賀茂神社・下鴨神社)
    男が政治、女が神をまつる
    鴨川の水源のひとつの貴布禰神社(貴船神社?)の水神を
    まつったのが最初のカモ神社(座田司「御阿礼神事」)
    神をまつる巫女が神の子(その子も神)を生む話

    神婚:
    ゼウスとデメテル→麦の穂、共同体の農作の豊穣、社会に開かれてる
    タマヨリヒメ→農作の豊穣からワケイカツチノ神、社会に閉じられた

    伊勢神宮の斎王≒カモ神社の斎院→両神社の類似性
    →伊勢神宮も男が政治、女が神をまつる(?)
    アマテラス大神は、もとは新嘗の儀礼をおこなう巫女(?)

    出雲国造 熊野神社→出雲大社(杵築大社)
    大和 オオクニヌシノ神
    出雲 オオナモチノ神
    三輪山にまつられているオオモノヌシノ神は
    オオナモチノ神の和魂(ニギミタマ)を分霊したもの
    (「出雲の国の造の神賀詞」)
    世襲する男の神主によって神まつり
    神火で調理した斎食をたべることによって(略)
    先祖のアメノホヒノ命それ自体となる(千家尊統)
    信州諏訪神社の大祝(祭司=祭神)≒出雲国造
    紀伊国、日前神社、国懸神社
    出雲国風土記ー神賀詞ー延喜式の順に成立か
    白鵠(しらみどり、「鵠」はくぐい、白鳥の古名)は
    魂を運ぶもの、または魂の象徴
    御忌祭、竜蛇(セグロウミヘビ)
    海の彼方の常世の国からの霊威がオオクニヌシノ神の原型(千家尊統)
    海の神の信仰にオオクニヌシの祭祀が重ねられた(著者)
    古伝新嘗祭(本来は熊野神社のまつり)
    まつりの対称が穀神クシミケノノ命→オオクニヌシノ神に

    美保神社、一年神主、蒼柴垣神事、湯立神託、神がかり
    ミホススミノ命からミホツヒメ(コトシロヌシノ神)

    水の禊→一年神主、斎王
    火の禊→出雲国造
    古代ギリシアやローマ、インドの火に対する信仰
    忌部の里の神の湯
     
     
    5章 神社と自然

    (海)
    志賀海神社、住吉神社、出雲大社、大湊神社、気多神社
    大洗磯崎薬師菩薩神社→オオナモチノ神またはその御子神
    [他 籠神社、玉前神社、沼名前神社、伊勢内宮]

    宗像神社、厳島神社
    あとずさりしてまつる(益田勝実「秘儀の島」)
    沖ノ島(宗像神社)の神まつりでアマテラス大神とスサノオノ命の
    うけいの祭式がおこなわれた(益田勝実「秘儀の島」)
    [他 都久夫須麻神社]

    (川)
    熊野本宮のケツミコノ神(穀神)=スサノオノ神
    出雲の熊野神社のクシミケノノ命(穀神)=スサノオノ神
    大和の広瀬神社のワカウカメノ命(穀神←ウカ)
    伊豆の広瀬神社、賀茂御祖神社、貴船神社、丹生川上神社
    大きな河川ではなく小川のほとりなどに式内社がある。そこに
    集落がはじめて開かれたため(菱沼男・梅田義彦「相模の古社」)
    [他 熊野新宮、賀茂神社(上・下)、寒田神社]

    (山)
    大神神社(三輪山、泊瀬川、纏向川)、筑波山神社(筑波山)、
    日吉神社(牛尾山)、三上山
    かむなび…山と「川」、出雲系の言葉?、
    葛木のかむなび(葛城川)、
    飛鳥のかむなび、加夜奈留美命神社(三諸山、飛鳥川)
    佐太神社(朝日山、佐太川)、伊勢内宮(島路山、五十鈴川)
    山の神→農耕→蛇体
    [他 諏訪神社(信濃国)、松尾神社、御上神社、稲荷神社(山城国)、
    大穴持神社(大隅国)、浅間神社、火男火売神社、大物忌神社、
    大神山神社(伯耆国)]

    (火山)
    オオナモチノ神(大隅と薩摩との国境)
    アサマノ神(富士山)、ヒノオノ神、ヒノメノ神(鶴見山)
    オオモノイミノ神(オオイミノ神?)(鳥海山)

    二十二社、大鳥神社、
    鴨都味波八重事代主命神社(鴨都味波神社)、三室山、
    葛城坐一言主神社、葛城山、高天彦神社、神体山(白雲岳)
    高鴨阿治須岐託彦根命神社、葛木御歳神社、葛木御県神社

    神社を日常生活圏の内側、外側で分ける考え方
     
     
    6章 日本の神の原型と機能

    自然→神社、ちはやぶる神、荒ぶる神、
    古墳→神社、祖神

    吉野水分神社の玉依姫神像
    若狭比古神社の神主の家系
    熊野本宮の熊野部千与定
    飯石神社、竜田の風神

    天つ神→自然神
    国つ神→農耕神

    各問題提起(性・権力構造・宗教倫理・自然)

    以上
     
     
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    たまには静かに思いを馳せて……


    「月の夜に静かに」歌は朱音イナリさんです。
     

     

    今回は日本神話の本の特集です。

    新マンガ日本史 創刊号「ヤマトタケル」の漫画は和月伸宏先生です。


  • スパルタとアテネ―古典古代のポリス社会(太田秀通著・岩波新書)感想

    おそらく、古代ギリシアのことに興味があるのなら最近出た本の中から選んで読んだ方がいいと思います。というのも、この本の初版は1970年、今から38年前であり、線文字B類の解読が大きな話題となっているぐらいなので、それならそれ以降の研究が反映された本のほうが真実に近づいていると考えられるからです。ただ、文章が平易で読みやすいこと、覚えておきたい考察が沢山あったことから結構この本を気に入ってます。また、本書は値段的にも手に入りやすいはずですので、その意味でも機会があればご一読をお勧めします。

    「ギリシアの美術」は同時に買いました。この際ですので「ヨーロッパ思想入門」もお勧めしておきます。ギリシア哲学にも触れていて、なかなか読み応えがありました。

     
    それでは本書を紹介します。「I 古典古代とはどんな時代か」では古典古代という言葉の持つ意味の解説と「古代ギリシア・ローマ」の概念の推奨、当時の国家やポリスの形態をおおまかに説明しています。本書によると「ポリスの国名は『アテネ人』『ラケダイモン人』『コリント人』『テーベ人』『アルゴス人』等々」(P13)とのことで、「アテネ人とは、アテネの市民団を意味し、」(同)ていた、とのことです。また、市民と土地の関係、自由やアレテー(「良さ」)にまつわる価値観、政治論について語られてます。

    「II 東地中海世界とホメロスの世界」で先に述べた線文字B類の話題が出てきます。そして、その解読の成果として当時のギリシアの社会をどう考えるべきか、について語られてます。また、土地と天候が農業に影響を与え、その農業を維持するためにどのような社会を形成したか、特に土地の所有のとの関わりについて詳しく分析しています。

    「III 貴族政ポリスとその危機」では身分、すなわち奴隷だとか農民、市民の実態について説明しています。農民の説明にヘシオドスの詩が引用されているのが印象的です。そして貴族政での社会の発展、立法家や僭主の登場、文化や学問の発展についてかなり語っています。コロフォンのクセノファネスの「ライオンが人間のように手をもっておればライオンと同じような神を描くだろうし、」(P75)という考え方が好きです。また、商工業が発展して貨幣を使うようになった結果、現実と本質を区別できる抽象能力が発達して哲学が発達した、というのもいい発想だと思います。(ただし、他のところではどうだったのか、という疑問もありますが。)

    「IV スパルタ―その国制の特徴―」では、スパルタの特異性を書き綴ってます。「敵に対する巧妙な攻撃と狡猾さを養うために盗みを奨励され、」(P88)だけでもインパクトが強い上に、その文の後に続くのは「また核心に迫るような短い言葉を吐くことを教えられた。」(同)で、スパルタ人がツイッターを始めたらどうなるのだろう、とか思ってしまいます。そして、そんなスパルタがどのようにして成立し、そしてどんな行く末をたどったのか、について書かれています。

    「V アテネ―その国制と政治過程―」ではアテネの政治体制、社会、歴史について述べています。殺人が「国家に対する犯罪」になるまでの過程(P106)が印象に残ります。また、書物「アテネ人の国制」を元に立法家ドラコンについて、そしてその後アテネを改革したソロンやクレイステネスについて多く語っています。鎌倉時代の徳政令を思わせる負債の帳消しがこの時代にもあったなんて驚きでした(P119)。

    「IV 戦争と平和のポリス社会」で、アテネとスパルタがともに語られます。政治、身分制度、土地所有の差、そして大国ペルシアとの戦史。その後の、アテネ中心でありながらポリスの概念の枷を超えられないが故にアテネの統一とはなりえないギリシアの歴史。そしてアテネの民主政についてはペリクレスの見事な演説を引き合いに出して説明しています。しかし、その後アテネは盛者必衰としかいいようのない事態に陥ります。章の最後にアテネの国家財政について触れています。

    「IIV ポリス市民の意識構造」は最終章で、祭典、アポロン、ディオニュソス、悲劇、喜劇がキーワードです。特に悲劇と喜劇については、それらがもつ社会的意味合いも含めて詳しく解説してます。また、ギリシア哲学についてはソクラテスの思想と当時のギリシア社会との関わり合いについてまとめています。そして最後に、このギリシア社会について引っ掛かりを感じる要素、奴隷制について論じています。

    一番読んでよかったと思えるのは最終章で、ギリシアの文化と思想について感心することが多かったです。でも、それらを生みだしたのはどのような社会であったか、という視点も重要で、それは今後もできるだけ意識しておきたいと思っています。

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    そして我々はどこへ向かうのか。


    曲は「マリオ」歌は冷声ゼロさんです。
     

     

    今回のアフィリエイトはギリシア特集です。

    最後の本は、むかーし読んだことがあるような……


  • 漢詩をたのしむ(林田愼之助著・講談社現代新書)感想

    「国破れて山河在り」「春眠 暁を覚えず」……少しキーボードを打っただけで変換ソフトが候補に挙げてくれる便利な時代。そんな今の時代でも漢詩は楽しめることを改めて確認しました。今回は講談社現代新書の林田愼之助著「漢詩をたのしむ」を紹介します。今までで一番とっつきやすい漢詩の本でした。

     
    漢詩には名文句が沢山出てきます。「歳月 人を待たず」「少年老い易く 学成り難し」(注・この二句は別の作者の別の作品からのものです)や「君に勧む更に尽くせ 一杯の酒」「一杯一杯復た一杯」のように聞くことの多いものから「春風に意を得て 馬蹄疾し 一日看尽くす 長安の花」「老鶴一声 山月は高し」「来るも亦た一布衣 去るも亦た一布衣」「独り寒江の雪に釣る」「天は蒼蒼たり 野は茫茫たり」「一架の薔薇 満院に香し」のように「どこかできいたことがあるような……?」と思えるものまで、この本にはそんないい調子の文句が沢山載っています。「朗吟して飛び下りる祝融峰」なんてのにはギョっとしました。それらを眺める……そう、読むというより眺めるだけで楽しいというのが一番に思ったことです。

    また、紹介する漢詩が概ね短いのがいいところです。短いけど充分味わえる、といったほうが近いでしょうか。だから短い時間に一つ二つつまむように見ることも可能です。そして、五言・七言の絶句や律詩だけでなく他のタイプの詩もあるので新鮮な感覚も得られるでしょう。

    なお、この本では紹介する漢詩には平易な文での訳と最小限の解説がついているので、かなりすんなりと漢詩の世界に触れることができます。あくまでも紹介・解説であって勉強や説教の類ではないのでとても読みやすかったです。

    あと、人によっては音読する楽しみ方もあるのではないかと思いました。もちろん書き下し文のほうで、少し読んでみたのですが結構リズムよく読めて気持ちよかったです。

    虫の声、鳴き声に触れた詩があったのでメモしておきます。楊万里の「夏の夜に涼を追う」(P225)という詩です。

    惜しむらくは、この本が電子書籍になっていないということです。本当にいい本なのにな。講談社は是非本書を電書化していただきたいです。
     
     
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    漢詩といえば大自然、私の場合はこの曲に。


    「北海道にやって来た」歌は朱音イナリさんです。
     

     

    今回は漢詩特集です。


  • 中世の食卓から(石井美樹子・ちくま文庫)感想

    石井美紀子著「中世の食卓から」は、中世ヨーロッパ社会の王侯貴族から庶民まで、様々な人たちの食した様々な食べ物とその周りのことについて書かれたエッセイ集です。体系的というより断片的な感じですが、結果として食材というか題材がバラエティに富んでおり、文体は軽いのですが微に入り細を穿った内容ですのでちょっとした空き時間に少しずつ楽しめます。

     
    目次(内容)は以下の通りです。

    序にかえて ローストビーフとフォアグラ

    おどけ者ジャック・プディング

    うなぎとイギリス史

    豚と王子様と惣菜屋

    スパイスは食卓の王様

    にしんは魚の王様

    オムレツとプリンが戻ってくる日

    饗宴と精進潔斎

    羊飼いの饗宴

    豆とスプーンと北斗七星

    甘美なものには手で触れるべし ナイフとフォークの話

    手洗いの儀式と汚れた手

    チーズと道化

    果物の王様、オレンジとレモン

    りんごの花びら

    女王様と爪楊枝

    サラダ泥棒

    愛の妙薬

    寝取られ亭主と梨とさくらんぼ

    お菓子とビールとエール

    ティファニーで朝食を

    ふとった王様とやせた子ども

    アダムのりんご (文庫版に寄せて)

    全体を通じて思ったのですが、中世ヨーロッパ社会といえばキリスト教の影響が強かったせいか、四旬節(レント)や降誕劇など、普段は知ることないキリスト教の習俗描写が多いのが新鮮でした。(ただ、本書で紹介されている風習が当時のヨーロッパ全土で行われていたのかどうかは、私には判断つかないです。)

    また、話が脇道にそれて道化や王家の歴史の話題に入るのもなかなか楽しめて、飽きがきません。そして、当時の料理法がちょくちょく載っているので、再現してみたくなる方もいるのではないかと思います。

    以下、個々に感じたことを書いておきます。

    P.38の「反対に、クレタの人々のように、豚を神聖なものと見なし、その肉を食べようとはしない国民もいる。」「インドやカナン、エジプトやギリシアの古代社会では、豚は太母のシンボルだった。」の箇所は初めてきいた話です。イスラム教の布教地域と近いので、何かの影響があったのかも。

    P102~103の大嘗祭と北斗七星のちょっとした話は覚えておこうと思いました(自分用メモ)。

    P147「古代のバビロニア人たちも、天の東の入り口に真理の木と生命の木があると信じていた。」とのこと。また、P149にはギリシア神話のヘスペリデスの黄金のりんごの木との関連が語られています。

    P153~154のギンガモールの話、城でのもてなし、タブー破り、帰還したら未来、老化、とどう考えても浦島太郎としか思えません。日本とヨーロッパとでイザナミ・イザナギの話(ラストの方)とギリシア神話のオルフェウスの話の類似がなくもないのですが、それでも驚きでした。

    P199以降の話、noonの語源と一日の最初の食事がディナーというのが意外。ところでランチは……?

    P219に知識の木はユダヤ人はオリーブ、葡萄、麦の束と考え、ギリシア人はいちじくの木と考えていた、とのこと。ここで思い出した話が一つあって、今は手元にないのですが、手塚治虫がキネマ旬報で連載していた「観たり撮ったり映したり」というエッセイがありまして。うろおぼえですが単行本を出した少し後に「ゆきゆきて、神軍」を観た影響で連載を続けられなくなり、その分までの単行本未収録を合わせて改めて出した……と思ったら、どの本にも収録されていない連載分があるようです。その中でアニメ「聖書物語」のエピソードがありまして。その設定をする際にヨーロッパのプロデューサーから言われたうちの一つが「禁断の実はリンゴではない、国によって解釈が違う」(大意)だった、ということを読んだ記憶があるので、あれはおそらくこういうことだったのかな、と思っています。

    最後に。このエッセイは明治屋(食品等の小売業者、明治製菓にあらず)が発行していたPR誌「嗜好」に掲載されていたものに加筆した、とのことですが、調べてみたら同誌は1908年発行開始で2008年で休刊とのこと。これも日本の縮小の一環なのでしょうか。読んだことはないのですが、100年間お疲れ様でした。
     
     
    ●その他・雑感など

    エノク書とかの聖書の外典からの引用が多かったのですが、それらはキリスト教の範疇に入れていいのか判断が難しいので少し距離をおいて捉えたほうがいいように思いました。また、外典はキリスト教に寄って書かれている分、民間伝承としても受け取りがたいものがあります。当初の購入目的は完全に果たしたとは言えないのですが、それでも細かい知識の記述が多いのは確かなので入手した甲斐がありました。
     
     
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    今回は食べ物の歌をどうぞ。


    「パスタを讃える歌」歌は王縄ムカデさんです。
     

     

    今回は食べ物とかの特集です。


  • 現代絵画入門 二十世紀美術をどう読み解くか(山梨俊夫著・中公新書)感想

    わけのわからない絵が一生暮らすのに不自由しないほどの高額で取引されるわけのわからない世界。そんな芸術、美術の世界が少しはわかるかもしれない、と思い本書を手に取りました。山梨俊夫著「現代絵画入門 二十世紀美術をどう読み解くか」。結果は……わかるようになった、とは言い難いけれどためになったのは確かです。

     
    はじめに二人の画家、ドラクロワとモンドリアンの話が出てきます。ドラクロワ?あれはわけのわからない絵じゃないじゃないか、と思われるかもしれませんが、ドラクロワも意外な評価を受けていて、つまり絵に対する評価の尺度は昔から変わってきていることがわかります。

    そして、絵について様々な考えが生まれ、その考えに基づいた作品が生まれてきます。マレーヴィッチ。この時点で「いいのか?これでいいのか?」といった気分になりました。そして、絵とは何かという問いかけは哲学の存在論に近いものを感じました。本質とか、「馬であることは馬であること、ただそれだけ」(アヴィセンナ(イブン・スィーナー)、井筒俊彦著「意識と本質」P40)とか、そういう議論のことです。

    ブラックがキュビズム以外の方向性の絵も描いていたことも初めて知りました。そして、今読んでいるこの本は美術史というより美術評価史の意味合いが強いのではないか……美術に限らず芸術の歴史とは作品が生み出された歴史とともに、どのような作品が評価されたかの歴史である。今更ながら、そんな気がしてきました。

    シュヴィッタース(メルツ絵画、メルツバウ)。デュシャン(レディ・メイド)。ボイス。ニューマン。それぞれに思索があり、作品がある。あるのですが、それがどれだけ多くの人に美を感じさせることができるのか。思索の説明文があってもかなり困難で、説明文無しなら相当難しいのではないか。読みながら、そう感じてきました。キルヒナー。ゴーガン(ゴーギャン)。ノルデ。ピカソ。ベーコン。ジャコメッティ。キーファー。様々な思索、ネタの羅列……

    モダニズム。そこから、マティス、モンドリアン、ロスコへと話が続いて、モダニズムの話で終わり、ここまでがこの本の射程距離です。

    最後のほうで引用されているイーグルトンの批判については、制約が外れて表現に幅が広がったものの、芸術自らのあり方を対象にすることによって感動の前に理解する必要性が高まった結果人々への訴求力が薄れ孤立した、と言い換えてもいいような気がします。そもそも商品とならなければ本当に芸術として独立できないのか、と雪舟の水墨画を見て思うのです。また、「画家の生存は、作品の流通する市場に左右されることに間違いない。」(P213)と言われても、商売がうまくいったり親の莫大な遺産を受け継いだりして市場に生存を左右されることなく創作活動を行う場合も考えられるので、商品と画家の関係については芸術一般というより個々の処世に関する事柄であるので、あまり論ずる必要性が感じられませんでした。

    あと、この本を読んだのがきっかけで自分なりの芸術に対する考え方をまとめてみました。ご一読していただければ幸いです。

    以下、読んでいてつらつら思った細かいことです。

    ・本書に掲載されているブラックの「ビリヤード台」は1944年作。当時の数学や物理学と何か関連性はないだろうか。非ユークリッド幾何学を思いついたのですが、1830年代(日本では江戸時代……)に成立していたようです。

    ・河原温(1932(1933?)-2014)の「日付絵画」(“Today” Series)にシュヴィッタース(1887-1948)のメルツバウに似たものを感じました。

    ・デュシャンについて語るのに、ティエリー・ド・デューヴ(1944生)の「レディ・メイドの時間」が引用されているか、その中に「反復」「差異」という言葉が出て来る。ドゥルーズの「差異と反復」(1968)と何か関係というか影響を受けたのだろうか。

    ・本書の内容と全く関係がないが、造形を視覚上3次元の芸術、絵画を2次元の芸術とすると1次元の芸術というのも存在するのだろうか。また、その際1次元を厳密に「限りなく細い(当然あらゆる波長(不可視光線の紫外線)より細い)」とすると、色は定義できるのだろうか。思いついたのでメモ。

    ・ジャコメッティの凝視のエピソードから、中国宋代の儒者が本質の探求のために庭前の竹庭を見詰め続けた話を思い出しました(井筒俊彦著「意識と本質」P80)。同書のそのページの少し前の詩人マラルメの話と合わせて、本質的に似た(或いは同じ)行為のような気がします。

    ・キーファー作「リリト」については、情報量を押さえて鑑賞者の想像に委ねるやり方(あるいは、その度合いの大きさ)に詩に似たものを感じました。私は、詩は普通の文章(散文)より言葉を削ってその分読者の想像力に委ね、更にそのことで鑑賞時間当たりの感情変遷の度合いを大きくするタイプの文学だと考えています。
     
     
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    今回は透き通った歌声をどうぞ。


    「水の鏡α」歌はUったんぽいでさんです。
     

     

    今回のアフィリエイトは芸術特集です(ほぼ前回と同じ)。表記より安い中古があるかもしれません。あきらめずクリックを。

    「意識と本質」少し読み返したらまた読み返したくなってきてしまいました。まだ今年買って未読の本がたくさんあるのに。ちょっとヤバいかも。
    P-modelのアルバム「IN A MODEL ROOM」には「美術館で会った人だろ」(ART MANIA)が収録されています。
    PSY・S(サイズ)のアルバム「NON-FICTION」に収録されている「Robot」という曲もこの話題に少し触れているような感じで「わからないけど これきれいだね」という箇所が印象的です。このアルバムには「Parachute Limit(パラシュート・リミット)」「EARTH 〜木の上の方舟〜」「Angel Night〜天使のいる場所〜」といったある時代の人にはピン!とくる曲も入っています。どれも楽しめる曲なので聴いたことのない方は聴いてほしいです。EARTHだけでも!お願い!