この本、当初はハズレかと思ってました。最初にキリスト教ではなくギリシア神話を主題としたものが幾つか出てきたときは「おっ」と思ったのですが、大仰(おおぎょう)な語り口がどうも自分の感性とは合わず、この調子まで最後まで続くのだろうかと考えてました。
読み進めていくうちにわかってきたのですが、最初のほうが昔の詩で、次第に後の時代の作品になっていく構成になってます。日本人が知っていそうな名前を挙げると、まずゲーテ、シラーが出てきて、やがてハイネが現れて、ニーチェが一作だけ出てきて、リルケの詩が並び……という感じです。ニーチェについては当初違和感がありました。ニーチェは思想家であって詩人としてはどうなんだろう、と。日本でいうところの折口信夫(釈迢空)のようなものなのだろうか。それが、後の解説を読んでみると「(略)表現であれ思想であれ、近い時代の者たちはいずれニーチェの影響を受けないではいなかった。」(P348)なんて書いてあって、またここでおお、と思ったわけです。ニーチェの詩が本書に載っているのは必然である、と。
そう、この解説がすごく良かったのです。ドイツにおける詩の歴史なのですが、クロプシュトックやゲーテに始まる本書に掲載されている詩人の作品の評価や意義がきちんと書かれていて、次に読むときはこの解説と照らし合わせて読もうと思っています。本は後ろから読め、あとがきから読めなんて意見をときたま見かけるのですが、本書は正にその言に合った書だといえます(あとがきではなく解説ですが)。
そして、長かったドイツの詩の古典を抜けた233ページ以降からは「現代詩」の感触が色濃くなり、やっと作品に心になじむようになってきます。詩集として確かにこの本はハズレではなかったと感じられるひととき。もちろん買って良かったといえます。特に良かったのがツェランの「死のフーガ」で、言葉の凄さを感じました。
以下は自分用のメモです。私がいいな、と感じた作品を書いておきます。
P139 シレジアの織工 ハイネ
P161 もはや相見ることはなく ヘッベル
P189 わがひそかなる歌 ラスカー=シューラー
P233 ばらよ、きよらかな矛盾 リルケ
P235 定義 クラウス
P273 偉大なるバールの賛歌(抄) ブレヒト
P285 都会人のための夜の処方箋 ケストナー
P299 つねに名付けること ボブロフスキー
P301 死のフーガ ツェラン
P325 洪水 グラス
P333 金魚 メッケル
この詩集も、数年後に再読したら自分の受け取り方も変わっているものなのだろうか……そう考えてます。
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ドイツ関係の本を少し集めてみました。思い立ったらすぐ買うが吉(^_^)。
「アドルフに告ぐ」(手塚治虫)は全巻セットです。