NHKの外国人材受け入れ拡大の報道に関して

4月です。入学入社、桜で花見、そして外国人材受け入れの春です。改正された入国管理法が施行される2019年4月1日から、外国人労働者は特定技能制度によって従来より広い範囲で働けるようになりました。

この話の発端は人手不足です。これは、去年2018年の12月6日に行われた第197回国会・参議院法務委員会第8号での安倍首相の答弁、

「今回の受入れ制度は、現下の深刻な人手不足に対応するため、現行の専門的、技術的分野における外国人材の受入れ制度を拡充し、一定の専門性、技能を有し即戦力となる外国人材を真に必要な分野に限って受け入れようとするものでありまして、その導入によって受入れ業種の存続、発展が実現されることになると考えています。」

に明らかに示されています。

昨日、4月13日のNHKのニュース7でこの件について放送していました。webのこの記事、外国人材受け入れ拡大 フィリピンで初の特定技能試験と同等の内容です。

この制度の下で働くことができるのは、上記の答弁にあるようにあくまでも「一定の専門性、技能を有し即戦力となる外国人材」がその対象です。そして、試験等によってその質を担保する仕組みになっています。しかし、放送ではその試験の内容について疑義を呈していました。試験内容には初歩的なものもあり、これで質を保てるか不安だということです。先のNHKのweb記事から引用すると、

「三重県の介護施設などを運営する会社の社長は『現場の人手不足が深刻なので特定技能の制度には期待しているが、このレベルの試験に合格しただけで介護現場の経験の無い人は採用できない』と話しています。」

とのことです。新たな外国人材受入れ(在留資格「特定技能」の創設等)試験関係「『特定技能』に係る試験の方針について」によると試験問題の作成は特定産業分野を所管する関係行政機関が行うので、この場合試験内容について責任を負うのは根本匠厚生労働大臣になるのでしょうか(介護は厚労省の所轄)。

さて、放映された試験問題の内容(web記事には他の選択肢が書かれていない)で上記の質を保てるものなのか。私が見たところ、専門性というより一般常識を問われているような気がしたのですが……先の会社社長の発言からして、厚労省、大臣は一定の専門性、技能を有し即戦力となる外国人材を得られるか、試験問題を厳密に確認しているのでしょうか。それとも、人手不足の会社をとにかく働き手で満たすことを最優先として動いているのでしょうか。私も疑問で不安です。もし試験を通過した外国人労働者が現場で機能しなければ、試験作成に関わった省庁のトップの責任が問われる話です。

(注:上記には例外があり、技能実習2号修了者は「特定技能1号」の技能試験・日本語能力試験の合格を免除されます。特定技能外国人受入れに関する運用要領のP14、P17より)

なお、今回の報道では触れていなかったのですが、日本語能力についても書いておきます。特定技能1号については、「特定技能外国人受入れに関する運用要領」のP4によると「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有することを基本としつつ、特定産業分野ごとに業務上必要な日本語能力水準が求められます。」とのことです。なので、特定技能1号で入ってきた人がこの基準を満たしていないと、こちらは(関係行政機関も関わっていますが)日本語試験実施機関の責任問題になります。

また、先の技能実習2号から移行した例も、2018年11月28日の第197回国会・参議院本会議第5号で山下貴司法務大臣が、

「特定技能一号への在留資格の変更に当たり、技能実習二号修了者については、実習職種において技能を修得していることに加え、三年程度日本に滞在して生活を営み、技能実習に必要な日本語能力も備えていることと考えられることから、特定技能一号の試験等を免除し、必要な技能水準及び日本語能力水準を満たしているものと評価し、試験等を免除することとしています。」

と発言しており、その上での日本語能力試験の免除なのでしょうから同じように政府の責任を問う話といえます。

特定技能2号(現時点では建設と造船・船用工業の2業種)に関しては、意外にも特に定められていませんでした(特定技能外国人受入れに関する運用要領の特定技能1号に関するP12-24の記述と特定技能2号に関するP24-32の比較)。

※特定技能1号、2号に求められる技術水準は以下の通りです。特定技能外国人受入れに関する運用要領のP4、5より

特定技能1号:相当程度の知識又は経験を必要とする技能が求められる。これは,相当期間の実務経験等を要する技能をいい,特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準のものをいうとされる。

特定技能2号:熟練した技能が求められる。これは,長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいい,現行の専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人と同等又はそれ以上の高い専門性・技能を要する技能であって,例えば自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる,又は監督者として業務を統括しつつ,熟練した技能で業務を遂行できる水準のものをいうとされる。

また、放送では試験の定員が少ないことにも言及していました。定員が少ないので応募ができない、と送り出す側の不満に焦点を当てた内容でした。それを受けて、厚生労働省福祉人材確保対策室の柴田拓己室長は「受験できなかった人のため、試験の回数を増やす予定で、日本の介護現場で働くことを希望する人が1人でも多く受験できるようにしたい。(以下略)」との話をしています。私は当初これを読んで受け入れ人数の上限を増やす話かと思ったのですが、記事中にはその表現は無かったので、あくまでも受け入れ人数はそのままで、受験できる人数を増やす(よって不合格者だけが増える)話なのでしょう。ただ、受け入れる側の要請のみならず、送り出す側の要請によって受け入れ人数の上限が増えることがないか、少し注視したほうが良さそうです。

この政策について私の思うところを、前にこのテーマで書いた時にも少し書いたのですが、また改めて書きます。今の世の中、人手不足を起因とした市場原理による待遇の変化、人件費の上昇や労働時間の短縮(残業時間の減少)がなければ、働き手が豊かになることが見込めません。そして、働き手に金銭的、時間的な余裕が無ければ子育ては物質、精神の両面で非常に困難になります。子育ての前段階の結婚についても同様で、忙しいときに結婚できてもコミュニケーションの時間が無ければ家庭は破綻して精神的ダメージともに金銭的にもダメージを受ける、年金が本当にもらえるか信じきれないこの現状では苦しい状況に陥る可能性が高い、そう考えても不思議ではないでしょう。そうでなくても、直接会話する時間が少なければ結婚によって幸せになれるとはいえません。

働き手の待遇が良くなって出生率が上がり2.1になる、もちろんそれ以外の福祉政策等に依ってでもいいのですが、この数値を達成するまでは人手不足が続いてもいいのではないかと思います。会社が倒産してもその業種の需要があるなら他の会社がその市場の分を賄うので問題はないだろうと思うのです。ただ、これはいい話ばかりではありません。待遇がよくなった分、物価やサービスの値段は上がります。働き手としての国民の収入は上がりますが、消費者としての国民の負担は増す話です。私はこれは、今まで子育てとか考えられなかった働き手の待遇を、これからは消費者が支えるために物価が上昇する話だと捉えています。

しかし、それでも働き手の待遇が良くなって出生率が上がれば国内需要が増えて収入も増える。自国の国民の需要を満たすために自国の国民を雇い、いい環境で働いて家庭を築いて次の世代をバトンを渡す、長期的にはこれでいいと思います。

今、この件についてNHKが意見を募集しています(外国人”依存”ニッポン「外国人”依存” ご意見・ご質問募集」)。何か思うことがあるのなら、意見を送ってみてはどうでしょうか。めったにない良い機会だと思います。
 
 
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今回はほのぼのとしたこの曲です。


曲名は「春の遠足」(1:42)です。
 

 

とりあえず政治の本を色々と。