• タグ別アーカイブ: 上田正昭
  • 日本神話(上田正昭著・岩波新書) メモ

    それにしても読みづらかった……入れ込んで読んだせいか、「この話は結局どこに着地するのだろう」「改めてライターの手が入れば、また違った読感になるのだろうか」などと何度も思いました。文の結論まで覚えておかなければならないことが多かったような……頭がこんがらがってきたら、開き直って流し読みでその話題の終わりまで読んでみることをお勧めします。

     
    上田正昭著「日本神話」(岩波新書、1970)は、日本神話の話題を広く網羅している本です。読んだ感想は前段の通りですが、議論されている内容は日本神話に興味のある方なら関心を持つことが多いと思います。

    本書の私なりのメモを以下に記します。ポイントは個人的なものです。

    序 日本神話の再発見

    ポイント:
    P.7 呉太伯後裔説(中世の解釈)
    P.11-12 神道国教化の記述

    I 神代史のはじまり

    1 口誦と記録

    概要:「読み」を文字化(漢字表記)するのは難しい、という話

    ポイント:
    P.23 江田船山古墳の太刀銘文
    P.25 大和の文氏(東書直)、河内の文氏(西書首)
    P.25 隅田八幡宮蔵の人物画像鏡銘文
    P.28-34 語部(という役職)とその内容について
    P.31 大贄
    P.34-38 銅鐸

    2 神話の舞台

    ポイント:
    P.44-47 憑りまし、巫女、卑弥呼、アマテラス、アメノウズメ
    P.47 コトシロヌシ(辞代主[事代主])
    P.47-50 サニワ(審神者、沙庭)、サニワのサは神稲の意
    P.50-52 志斐の翁と嫗
    P.52-61 たましい、けがれ、殯(もがり)、ひつぎ、祖霊

    3 三つの神代史

    ポイント:
    P.63-72 古事記における天武天皇、元明天皇、太安萬侶[太安万侶]
    P.69 古事記の序文の手本は唐の長孫無忌の進五経正義表や進律䟽義表(䟽は足へんに流のつくり)
    P.70-72 アマテラス
    P.71 日食神話は日本特有ではない
    P.73-79 日本書紀(古事記との比較)、韓の国、帰化系の和氏(やまとし)と日本在来の大和氏
    P.79 出雲国風土記、ヤツカミヅオミヅヌノミコト、オミヅヌノミコト(淤美豆奴命[意美豆努命])

    II 天つ神の世界

    1 天地の創成

    ポイント:
    P.87 記紀の冒頭や序文における淮南子、三五歴紀、周易正義、列子、東南アジア・ポリネシアに広がる海洋民の神話の影響
    P.88 三・五・七の中国ふうの聖数の概念
    P.89 中国の天・天帝の観念
    (自分としては数合わせのために神を削るか疑問)
    P.89-90 アメノミナカヌシはほとんど祭祀されていない、ちなんだ社名のものは北辰大明神をまつった妙見社が本姿
    P.90 国生み……蒙古語族のカルミュク族などの神話にもある
    P.90-91 おのごろ島は大阪湾上のどこかに
    P.93 越洲をふくまない所伝のほうが、より古い国土意識を背景とする
    P.93 ヒルコ……台湾高砂族、沖縄、東北地方の民俗に関連
    P.95-97 国生み神話の原初の姿は、淡路地方を中心にした海人たちのあいだにはぐくまれた島生みをめぐる信仰にあったと考えられる……八十島祭、住吉大社の恵比須まつり
    P.96 エビス……中華思想にもとづく化外の意識

    2 天つ神の誕生

    概要:アマテラス・ツクヨミ・スサノオの話

    ポイント:
    P100 アマテラス……元は日の神に奉仕する女神
    P101 ツクヨミ……元は月齢を数えること
    P101 日本神話は夜空の天体についての認識がきわめてとぼしい
    P101 夜の神=月の神が、日の神とともに天上を治める神話は他の民族にもあって、
    P101-105 ツクヨミは、元は壱岐(海人集団)の神
    P106 根の国は、元は海原の彼方(根拠は大祓の祝詞)
    P107 北方的な要素が強い(北方系シャーマニズム、北方アジア系の建国神話)
    P107-108 黄泉比良坂

    3 皇祖神の源流

    ポイント:
    P113 (アマテラスの)本体は地方神としての日の神
    P113 延喜式神名帳はすべての神社を登録している神社台帳ではない
    P115 本来日の神は、農耕民のあいだで、かなりひろくまつられていた神であった。
    P122 タカミムスビ(神体木(神籬)と田の神)こそが皇祖アマテラスオオミカミよりも原初の神、オオヒルメムチはこの神に仕える巫女
    P122 月の神・日の神の託宣では「タカミムスビがわが祖」
    P125 タカミムスビは対馬あたりと密接な関連をもった文化を背景にする神

    III 国つ神群像

    1 天と国と

    概要:天つ神と国つ神の分類について、出雲氏・鴨氏秦氏の奉斎神から考える

    ポイント:
    P133 意宇の熊野大神はこの地方の農耕神としての性格がつよい
    P137 ヤタガラス(八咫烏)をトーテミズムの痕跡とはいえない(作りあげられた伝承)
    P141-145 スサノオ

    2 葦原の中つ国

    概要:出雲地方とオオナムチ(大国主命)

    ポイント:
    P147-149 出雲という地名について
    P151-152 神宝
    P152-154 オオナムチ(大国主命)の名前
    P155 農耕神こそがオオクニヌシの原初の姿であった
    P155 火の山の神をあおがれるような神とさえなる
    P156-157 スクナヒコナ(農耕神)もオオナムチも海から来臨
    P157-160 佐太大神(佐陀神)も海から来臨する農耕神(佐太=狭田(細長い田))、祖母はカミムスビ(祖型は南方的要素が強いと思われる)

    3 国ゆずりの軌跡

    概要:出雲の国ゆずり神話について、熊野大社・杵築大社

    ポイント:
    P165 出雲地方が中央に帰属するようになってから、出雲の勢力が大和へ移住したり、あるいは出雲の文化が中央にはいった結果とみるほうが適当
    P173-174 改新の詔の副文は、『日本書紀』の編者がのちの知識で書いたところがあって、そのままには信用できない。
    P175 出雲臣果安
    P177-181 タケミカヅチ(雷神・天神・雨乞い)、フツヌシ(剣の神格
    化)
    P182-185 コトシロヌシ(海神)、唖
    P185 「八尋熊鰐(やひろわに)となりて」、東アジアには熊を水神とする信仰がかなりあり、

    IV 神話の重層

    1 山上来臨

    ポイント:
    P190 ニニギノミコト……山上に来臨する神と、海上を遊幸する神
    P190-191 山上に国づくりの神……北方アジアに広く分布(檀君神話、辰韓の始祖、高句麗の始祖(朱蒙)、蒙古の神話(ゲセル・ボグドウ))
    P191 朱蒙、加羅(首露)、新羅(赫居世・脱解)は卵生、卵生は日本神話にはない
    P191 加羅(首露)、新羅(脱解)、沖縄の祖神アマミキョは海辺遊幸的
    P191-192 ニニギ……海洋民系神話の要素も
    P193-195 高千穂
    P195 五伴緒・五部神……「五」はツングース系の大陸遊牧民由来?
    P197-200 久米部
    P201 宮廷の御神楽にも韓神のまつりや韓風の神招き(かんおき)は入っていた
    P201-202 三種の神器について

    2 海上遊幸

    ポイント:
    P205 コノハナノサクヤヒメ……”バナナ・タイプ”セレベス島ポソ地方、マライ半島、インドネシア・ニューギニア
    P206 出産のおりに火をたく……東南アジア、奄美大島
    P207 海幸彦・山幸彦……セレベス島ミナハッサ、南洋パラウ島
    P207 海神の娘との結婚譚……ニューブリテン島
    P207-210 隼人の海幸彦山幸彦神話は、東南アジア諸地域とのつながりの深い海上遊幸の神話であった。
    P210 タブー(禁忌)を破って海の女神の姿を見て離婚……東アジアやインドシナあたりにある。
    P211 海神の女が、海辺によりきたって子神を生む神話は、海のかなたより来訪する母子神の信仰が母胎
    P211-212 母子神と海・川・田
    P213 海原を古事記は『妣の国』と呼んでいる
    P214 トコヨノクニ(常世)は沖縄のニライカナイと同系の妣の国
    P215 常陸国風土記には神仙思想とのつながりを示す意識も
    P215 出雲・南九州・伊勢・茨城の海上……黒潮(文化)の影響
    P215 紀伊半島と房総半島の地名には共通するものが少なくない
    P217 大生部多の常世の神……道教的信仰、シャーマン的

    本記事は告知なく加筆・修正する場合があります。ご了承願います。
     
     
    【宣伝です】趣味で作曲した作品の動画などをYoutubeで公開してます。
    チャンネル登録していただけたらありがたいです。ニコニコ動画もどうぞ。

    今回は春を望む歌をどうぞ。


    「星のつぼみ」歌は野々原くろとさんです。
     

     

    以下は日本神話の本の特集です。

    ※中島らも「ガダラの豚」は大生部多のエピソードをちょっと使っています。長くて楽しめる少し不思議な感じのエンターテイメント小説です。