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  • 日本の神々 古代人の精神世界(平野仁啓著・講談社現代新書)感想とメモ

    本書の初版は昭和57年(1982年)8月20日、今から35以上も前になります。数々の論文・考察が引用されていて、時代の反映なのか折口信夫、柳田国男の存在感がやはり目立っている感じがします。また、出雲大社に関する事柄については千家尊統の論に負うところが多いです。

     
    本書の議論が今に通じるかどうかは私も現代の議論に詳しくないのでなんとも言えません。ただ、著者の考察に若干純朴なところを感じたせいか、全てをそのまま受け入れる気にはなりませんでした。また、折口信夫の論も推測を重ねた印象があるので心理的には距離を置いています。しかし、本書全体としては日本神道について考えるためのヒントを十分に提供しており、慎重に各論を判断した上でなら一読する価値はあるでしょう。

    以下は私なりに本書の内容をメモしたもので、自分で見返すために書いたようなものです。4章・5章が読み応えがあった箇所で、メモの量にもそれが現れています。若干私の主観が入っている箇所(「(?)」とか)もございますのでご注意願います。

    なお、未電子書籍化なのでご購入はページ下部からどうぞ。
     
     
    日本の神々 古代人の精神世界 メモ

    1章 生と死の宗教意識

    ハイヌヴェレ神話→オオゲツヒメノ神、ウケモチノ神→
    壊されやすい土偶(完全な形で発見されることは稀)(1)

    アイヌとアメリカインディアン(原文ママ)の考え→
    「動物は人間に食せられるということを悦ぶ」
    (松本信広「日本神話の研究」)→
    死と新たな生が組になっている(2)

    (1)(食物の確保)、(2)(新しい生)→土偶をこわして配布

    蛇体把手、顔面把手、甕棺葬、石棒と石柱
     
     
    2章 稲作の宗教意識

    稲作→太陽→鏡
    銅鐸は稲作のまつりに使われた?
    高床式倉庫には神がまつられていた?(折口信夫を参照)
    海の彼方の常世の国、または天から鳥が穀物をもたらした
    天から天女が穀物をもたらした
     
     
    3章 日の御子の出現

    古墳の出現→神社?

    大和の大王家は早くから太陽神を守護霊
    (岡田精司「天皇家始祖神話の研究」)、稲作の影響
    (日祀部(日奉部)、日置部(水神→河口や川の合流点)、日沈宮)

    大嘗祭(天皇の即位式):
    天皇霊(外来霊)を天皇の体に取り入れることによって
    直接にアマテラス大神の孫という関係に(折口信夫を参照)
    その年の新米が必要

    新嘗:
    母稲にすべての稲魂が集中して保持される(東南アジア)、冬至→
    (高天原ではなく)常世から来年の豊作を祝福する神が来訪?
    稲の精霊の復活が目的

    新嘗+日継→大嘗祭、日の御子は稲の精霊でもあった

    稲を高く積んだ祭場→高千穂(柳田国男「稲の産屋」)
    高天原で稲作がはじめられた→ニニギノ尊は稲の精霊

    「吾が高天原に所御す斎庭の穂を以て、亦吾が児に御せまつるべし」
    →天皇がアマテラス大神に稲の新穀を供進することが新嘗に追加
     
     
    4章 神をまつる人々

    神が人にまつることを要求する

    伊勢神宮、斎王、渡会氏、宇治氏、荒木田氏

    伊勢神宮は、土着の地方神の存在の上に、
    アマテラス大神の信仰が重ねられた
    (藤谷俊夫・直木孝次郎「伊勢神宮」)

    カモ神社(上賀茂神社・下鴨神社)
    男が政治、女が神をまつる
    鴨川の水源のひとつの貴布禰神社(貴船神社?)の水神を
    まつったのが最初のカモ神社(座田司「御阿礼神事」)
    神をまつる巫女が神の子(その子も神)を生む話

    神婚:
    ゼウスとデメテル→麦の穂、共同体の農作の豊穣、社会に開かれてる
    タマヨリヒメ→農作の豊穣からワケイカツチノ神、社会に閉じられた

    伊勢神宮の斎王≒カモ神社の斎院→両神社の類似性
    →伊勢神宮も男が政治、女が神をまつる(?)
    アマテラス大神は、もとは新嘗の儀礼をおこなう巫女(?)

    出雲国造 熊野神社→出雲大社(杵築大社)
    大和 オオクニヌシノ神
    出雲 オオナモチノ神
    三輪山にまつられているオオモノヌシノ神は
    オオナモチノ神の和魂(ニギミタマ)を分霊したもの
    (「出雲の国の造の神賀詞」)
    世襲する男の神主によって神まつり
    神火で調理した斎食をたべることによって(略)
    先祖のアメノホヒノ命それ自体となる(千家尊統)
    信州諏訪神社の大祝(祭司=祭神)≒出雲国造
    紀伊国、日前神社、国懸神社
    出雲国風土記ー神賀詞ー延喜式の順に成立か
    白鵠(しらみどり、「鵠」はくぐい、白鳥の古名)は
    魂を運ぶもの、または魂の象徴
    御忌祭、竜蛇(セグロウミヘビ)
    海の彼方の常世の国からの霊威がオオクニヌシノ神の原型(千家尊統)
    海の神の信仰にオオクニヌシの祭祀が重ねられた(著者)
    古伝新嘗祭(本来は熊野神社のまつり)
    まつりの対称が穀神クシミケノノ命→オオクニヌシノ神に

    美保神社、一年神主、蒼柴垣神事、湯立神託、神がかり
    ミホススミノ命からミホツヒメ(コトシロヌシノ神)

    水の禊→一年神主、斎王
    火の禊→出雲国造
    古代ギリシアやローマ、インドの火に対する信仰
    忌部の里の神の湯
     
     
    5章 神社と自然

    (海)
    志賀海神社、住吉神社、出雲大社、大湊神社、気多神社
    大洗磯崎薬師菩薩神社→オオナモチノ神またはその御子神
    [他 籠神社、玉前神社、沼名前神社、伊勢内宮]

    宗像神社、厳島神社
    あとずさりしてまつる(益田勝実「秘儀の島」)
    沖ノ島(宗像神社)の神まつりでアマテラス大神とスサノオノ命の
    うけいの祭式がおこなわれた(益田勝実「秘儀の島」)
    [他 都久夫須麻神社]

    (川)
    熊野本宮のケツミコノ神(穀神)=スサノオノ神
    出雲の熊野神社のクシミケノノ命(穀神)=スサノオノ神
    大和の広瀬神社のワカウカメノ命(穀神←ウカ)
    伊豆の広瀬神社、賀茂御祖神社、貴船神社、丹生川上神社
    大きな河川ではなく小川のほとりなどに式内社がある。そこに
    集落がはじめて開かれたため(菱沼男・梅田義彦「相模の古社」)
    [他 熊野新宮、賀茂神社(上・下)、寒田神社]

    (山)
    大神神社(三輪山、泊瀬川、纏向川)、筑波山神社(筑波山)、
    日吉神社(牛尾山)、三上山
    かむなび…山と「川」、出雲系の言葉?、
    葛木のかむなび(葛城川)、
    飛鳥のかむなび、加夜奈留美命神社(三諸山、飛鳥川)
    佐太神社(朝日山、佐太川)、伊勢内宮(島路山、五十鈴川)
    山の神→農耕→蛇体
    [他 諏訪神社(信濃国)、松尾神社、御上神社、稲荷神社(山城国)、
    大穴持神社(大隅国)、浅間神社、火男火売神社、大物忌神社、
    大神山神社(伯耆国)]

    (火山)
    オオナモチノ神(大隅と薩摩との国境)
    アサマノ神(富士山)、ヒノオノ神、ヒノメノ神(鶴見山)
    オオモノイミノ神(オオイミノ神?)(鳥海山)

    二十二社、大鳥神社、
    鴨都味波八重事代主命神社(鴨都味波神社)、三室山、
    葛城坐一言主神社、葛城山、高天彦神社、神体山(白雲岳)
    高鴨阿治須岐託彦根命神社、葛木御歳神社、葛木御県神社

    神社を日常生活圏の内側、外側で分ける考え方
     
     
    6章 日本の神の原型と機能

    自然→神社、ちはやぶる神、荒ぶる神、
    古墳→神社、祖神

    吉野水分神社の玉依姫神像
    若狭比古神社の神主の家系
    熊野本宮の熊野部千与定
    飯石神社、竜田の風神

    天つ神→自然神
    国つ神→農耕神

    各問題提起(性・権力構造・宗教倫理・自然)

    以上
     
     
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    たまには静かに思いを馳せて……


    「月の夜に静かに」歌は朱音イナリさんです。
     

     

    今回は日本神話の本の特集です。

    新マンガ日本史 創刊号「ヤマトタケル」の漫画は和月伸宏先生です。