音楽プロデューサー 岡野ハジメ エンサイクロペディア CATHARSIS OF MUSIC 感想

PINK。その言葉の意味するところは多々あれど、私にとっては私が中学・高校の頃に活動していた日本のバンドのことを指します(ファンサイトWikipedia)。そのベーシストの岡野ハジメ執筆による本が出版されました。それが「音楽プロデューサー 岡野ハジメ エンサイクロペディア CATHARSIS OF MUSIC」で、本屋で少し中を確認して半ば義務のように即購入しました。PINK、ならびにそのメンバーについての本はバンドスコアを除いて他にはないはずで、その意味でも貴重です。そして今、一通り読み終えて満足してます。

 
まず初めのカラーページからすごいです。著者が今まで使ってきた数々の楽器が並んでいると思いきや、ところどころの楽器の紹介文の最後に「製作途中。」の文字が。そう、楽器自体の製作にも関わっているのですね。その様子はP101~105に詳しく述べられています。

ホワイトファルコンのデザインがなかなかインパクトがあります。ちなみに、「岡野的にモズライトはギターではなく、モズライトという楽器として別にカテゴライズしている。」(P22)のだそうです。私は楽器に詳しくないのですが、「二郎はラーメンではなく二郎という食べ物である」というニュアンスとして受け取っていいのでしょうか。「一家に一台、エレキシタール!」(P29)もいい言葉だと思いました。

あと、いいなと思ったのは、GS(グループサウンズ)について語っているところです。私はというとGSが流行った当時は生れておらず、テレビの懐かしいあの頃の特集とかで当時はすごく人気があった、ぐらいの認識だったので、本書のような考え方、切り口は斬新に感じられました。

また、この部分のみならず身の上話と平行して当時の音楽状況が述べられていて、興味があったので非常に読んでいて楽しかったです。同時にこの時代、特に1980年前後数年の東京の音楽シーンの一面の記録としてそのまま重要な証言になる、とも思いました。

P121のDEAD ENDの話は似たようなことをどこかできいたことが。佐久間正英がGLAYについて語った記事だったような。

P124の海外レコーディングを勧めない話、なるほどなるほど……いかに先入観を排し、客観的になって考えられるか。どれだけ自分を信じられるか、につながる大事なところだと感じました。

そして、プロデューサーを務めたL’Arc-en-Ciel(ラルク アン シエル)の話。となると、アルバム「HERAT」以降についての音楽製作についてなのですが、読んで思ったことはラルク アン シエルのファンの方は今すぐ本屋に行ってP147からチェックして「これは!」と感じたら即買うべきだ、ということです。私も、私の好きなバンドやそのアルバムについて、プロデューサーが製作状況をこれくらい濃く語った本があるのなら、本書のように迷わず購入するでしょう。それほどラルクのファンの方はこの本の存在は知っておくべきだと感じました。ラルク アン シエルに関する話は、プロデューサーとしての話とキーボード、マニピュレート担当の斎藤仁との対談の二章分あって、一人で語るのと相手がいて話すのとでは切り口が違っていて読み応えがありました。

さて、私の趣味は作曲で、動画をつくってネットで公開しています。もっとも、ここしばらくの間はいろいろあってその活動ができないでいるのですが、それでも大事な趣味です。ただ、楽器の演奏はできなくて音源製作は専らパソコン上で行っています。

なぜ感想の最中にこんな話をしたのかというと、P233から「33 Practice 岡野的・33の気になる命題」という雑多な内容のコラムが載っているのですが、その中に音楽製作に役立ちそうな考え方がちらほら載っていたのも買ってお得な感じだったからです。TRFの「さーむーいー夜だーかーらー」にはそんな意味があったのですね。深い。なお、楽器を演奏される方なら更に役立つ情報もあり、そしてバンドを組んでいる方なら更に更にためになる内容だと思いますのでここに記しておきます。

そして最後。P301からの「岡野式(モード)スケールについての思考実験」については、楽器の演奏できる方の意見をきいてみたいです。

どう考えても買ってよかった本。PINKの再結成が無さそう(本書にもそう思わせる記述あり)なのでせめて思い出話でも聞きたかったし、本書をきっかけにPINKの音楽をYoutubeやニコニコ動画からでも聴く方がいてくれたらファンとしてはありがたいものです。この際ついでに書きますが、カラオケに「DON’T STOP PASSENGERS」しか見当たらないのが全然納得できません。昔「keep your view」を歌った記憶があるのですが朦朧として正直妄想とごっちゃになったのか今となっては自信ないです。

語り継がれる人がいる一方で、語られない人がいる。懐かしのテレビ番組の特集なんかはある程度売れていても、映像資料がなければ名前すら読まれることはないのではないでしょうか。ラジオは聴く人は少ない、特に若い人は昔より聴いていないだろうし、だとすれば……名盤を特集した本が、語り継ぐための最も有力なメディア?でもサウンドが伝えられないのがつらいところです。

現時点での、作品を未来に残すための最善の方法って何だろう。自分で作曲して音源を製作した作品を残す場合は………………………………作品をDVDフォーマットとusbメモリに詰めて、作品を解説した本を執筆して、できるだけ経年劣化しない質の紙に印刷して同人誌で出版、そして国立国会図書館に納本するとか、そんな感じなのでしょうか。

ポップスに関しては自分が生まれる前の時代の、メディアで取り上げられなかったミュージシャンや歌手を積極的に、それこそ発掘するかのごとく調査する人なんて今も昔も、そして未来も滅多にいないでしょう。自分の好きな音楽や、音楽だけでなく本やマンガとかもそうですが、今から100年後、200年後に伝えるにはどうしたらいいか。埋もれ(させ)たくなかったら言えるうちに、特に発言が大多数の人に伝えられる機会があったらその機を逃さずに色々言うしかないのだろうなあ。

そんなわけで、これからも当ブログでは私の好きなものや良いと感じたものを、微力ではありますがこうして書き綴っていきたいと思います。創作を生業にしている方、特にバンドブームの時期にメジャーから一枚でもレコード・CDを出したシンガー・ミュージシャンの方は、とにかくあの時代のことを書きまくってほしいです。あの時代の音楽を楽しんだ私としては、未来の人にあの頃のように聴いて欲しい、というのは無理としても、聴ける可能性、できるだけたやすく当時の概要をつかんで聴けるようになっていることを切に希望してます。
 
 
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今回はこの曲、


「黒い波、予兆、明日」です!
 

 

今回は微力ではありますがPINK、L’Arc〜en〜Ciel、pugs関連です。「ポップス イン ジャパン」にはホッピー神山のインタビューが掲載されています。また、上段真ん中の「ピンク サイコデリシャス」はバンドスコアです。

下段の一番右が「CHIMATO KUBIKI」です。