ひとりぼっちを笑うな(蛭子能収著・角川新書) 感想

ユルい。ユルい本です。考えがまとまりきらないうちに書いているようなところもあります。しかし、人付き合いに疲れたら……いや、「人付き合いしなければならない、という声」にうんざりした方にはこの本をおすすめします。このユルい本が存在していること自体が、人付き合いをしなければいけないのではないか、という類の観念を含めた堅苦しく感じがちな世の中に対する別の考え方、つまりは生き方を提示しているからです。

 
本を書く行為が「優れている者が教えを広める」構図に含まれる以上、一般的に著者の言葉はどこか説教臭く、最近の言葉でいうならいわゆる「上から目線」になりがちです。それは、どこか成功者のイメージと重なるところがあって、他人より秀でて、かつそれを自覚している人の意見しか世の中に流通されないのではないか、言い換えるならあまり上手くいっていない人の意見は世に出回らない、という認識に繋がっていくのではないかと思います。その結果、人は多く出回っている意見ほど「正しい」と判断しがちなので、結果として上手くいっていない(と自覚している)人はその意見とともに駆逐されがちになるのではないか……そう思われている方もいるかと思います。

しかし、この本の著者、蛭子能収は初めのほうで自分を控えめな存在として書いています。例えば、P6.の「僕は漫画家だし、誰かに物事を教えられるような人間でもない。」のように。それもまた、先に述べた状況とは逆に、自分が他人より優れていると思っていなくてもその意見が世の中に出回り、多くの人の目に触れる可能性があることを示す、いい例になっていると思います。そして、そのような意見が心の拠り所となるならば、上手くいっていない人にとって結構救いになる状況になるのではないでしょうか。

なお、この本はユルいことだけを書いているのではなく「これだけは守るように」ということも書いています。一定の節制はあるのですが、それでも、世の中生きづらいと感じている人にとっては心を休ませることができる良い本だと思っています。

最後に。P.135に「近所の貸本屋に行って、いわゆる”劇画”と呼ばれるようなものを好んで読むようになったんです。水木しげるさんや、さいとうたかをさんなどの漫画が載っているような部類の雑誌です。」とあったのですが、水木しげるの書いた物、例えば「ねぼけ人生」(未読)とかと読み比べてみるのもいいかもしれない、と思いました。
 
 
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今回はユルく聴ける曲をどうぞ。


「小鳥の小躍り」という曲です。
 

 

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