オホーツクの古代史(菊池俊彦著・平凡社新書) 感想

今年初の記事です。皆様今年もよろしくお願いいたします。
 

今回のお題。


 
 
●そもそも私は何が知りたかったのか

その書名が示す通りオホーツクの古代史であり、つまり政治史と文化史です。古代オホーツクの複数の民族集団について、誰が統治していてそれらの内外でどのような抗争があったのか。その人たちはどのような文化があり暮らしを営んでいたのか。特に神話とか伝承の類とか、その辺を知りたいと思い購入したのですが。
 
 
●この本に書いてあったこと

一言でいうなら、古代オホーツク文化の担い手に関する研究史でした。昔の中国の資料、「通典」「唐会要」「新唐書」「資治通鑑」に流鬼(流鬼国)から朝貢の使節が長安にやってきた。流鬼(流鬼国)はどこにあるのか。それはどんな民族であったか。それらの問題を検討しながら、昔の中国の資料の読み解きや近代の研究がまとめられています。

その検証の過程で流鬼の民族の文化が垣間見えるところもあります。馬に乗るのが不得手なこと。土器・骨角器・金属製品。住居址。そして交易品「骨咄角(こつとつかく)」……しかし。
 
 
●感想

これを「秘められた古代史にスリリングに迫る!」と書くことも可能なのでしょう。でも、私は普通の歴史の教科書みたいに結果だけを知りたかったので、その意味では期待に添えるものではありませんでした。昔の中国の資料の解釈をしているので、それに興味がある方ならもう少し楽しめそうな気がします。

ただ、書く側になって考えると研究・論争史を書きたかった、という気持ちはわかるのです。調べる側からすれば結果はただあるのではなく、多いとは言えない資料や遺跡からの出土品と、それを埋める何十もの考察の上に成り立つものなのだから。なので、私みたいにこのテーマについて回りくどいのが苦手な方には本書はおすすめできません。逆に、それらの過程を含めて興味がある方には一読をおすすめすします。
 
 
●その他

P.172に「それゆえに阿倍比羅夫の粛慎(みしはせ)征討の記事は実際の事実の記録ではなく、阿倍比羅夫の航海の何らかの本来の目的と任務は別にあり、それを隠すためにはるか中国北方の粛慎(しゅくしん)の名前を持ち出したフィクションにすぎないだろう。」(注:フリガナを()内に表記しました。)という一節があり、著者なりの見解に基づいた上で書かれているのですが、そこまで言い切っていいものなのだろうかとそこは疑問に思いました。

参考:粛慎 (日本)(Wikipedia)
 
 
●個人的なメモ(半纏・バレ注意)

流鬼(流鬼国):サハリン島 オホーツク文化の人たち:ニヴウ民族(旧称 ギリャーク民族)
夜叉(夜叉国):サハリン北方のオホーツク海北岸のコリャーク民族
 
 
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今回は北へいざなう動画。


「雪景色着陸」 津軽海峡から千歳への空撮、BGM付です。
 

 

以下はオホーツクの特集です。