雪国動物記(高橋喜平著・PHP文庫)感想

動物記の類は久しぶりだな、と読み進めていったのですが予想以上に面白かったので本当に読んでよかった気分になりました。今回紹介する本は高橋喜平著の「雪国動物記」(PHP文庫)です。元は明玄書房より1959年に刊行で、つまり約60年前の本なのですが、それでも面白く、そして読みやすいことにただただ驚嘆するばかりです。

 
新潟県で研究を行っていた著者による野生動物の観察記なのですが、読んで伝わってくるのが著者の動物に対する愛情です。愛情があるからこそ動物に対して深く優しく接することができる、そんなことを改めて認識しました。

取り上げている動物は熊が多く、そしてキセキレイなどの鳥類、そしてノウサギ、ヤマネなどの小さな哺乳類です。虫の話も少しありました。喜びに満ちた話もあれば、悲劇的な話もあります。それが野生の姿だという実感が湧いてくる、という意味でも読んでためになる本です。

ここで、本書を読んで気になった話をいくつか書いておきます。まず、夜だけ鳴いて人に姿を見せない鳥の話があるのですが、姉崎等・片山龍峯著「クマにあったらどうするか」でも似たような話があります(魔性の鳥ケナシウナルペ/第四章 アイヌ民族とクマ)。断定はできないのですが、もしかしたら同じなのかもしれない。しかし、それ以上に気になるのが全国的にこの手の「夜だけ鳴いて人に姿を見せない鳥」の言い伝えがあるのではないかということで、それは昔の人が自然に対してどのような想像力を働かせてきたのか、そしてどのような話を紡いできたのか、それらは昔の人の考えや心情を知る上で大切なことなのだろう、とそんなことを想いました。

また、日本神話の因幡の白兎についての話も覚えておきたい話です。なぜ、他の動物ではなく兎なのか。著者によるとノウサギの生皮ははがれることが多いとのことで、確かにこれはノウサギと接していないと出てこない視点であり、率直に感心しました。

ヤマドリの話もなかなかいい話でした。子を守る親鳥の話です。ヒナを、卵を守るために親鳥はここまでする……人間の子に対する愛情とヤマドリのそれを単純に一緒にはできないのでしょうが、それでもこの話を読むと感化され、思い至るところがあると思います。

他にも、カエルの冬眠やカマキリが卵を産みつける高さとの冬の寒さとの話、熊が冬ごもりする穴にはいって熊の気分にひたってみた話、温泉旅館と思われる部屋で熊とビールを飲んだ話(写真有り)、初めて雪を見た鳥たちの話など、著者ならではの独特な視点や出来事が綴られています。それらの体験が私までその場にいたかのように伝わって来るのはつくづく文章力のなせる業であり、本当に、もっと広く知られてもいい本だと思いました。

なお、小説家の高橋克彦は著者の甥であり、この本の解説を書いています。身内からの伯父である著者への言葉にも、また味わいを感じました。
 
 
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新潟ではなく北海道の曲でよろしければ。


「北海道にやって来た」歌は朱音イナリさんです。
 

 

今回は動物特集です。

下段は動物に関する曲が収録されているアルバムCDを集めました。レピッシュ「アニマルII」に収録されている「アニマルビート」は人生の新たな旅路に合ってそうな(?)曲です。また、「Times」の「野生の王国」はある意味パニックものの軽妙な曲です。有頂天「Search For 1/3 Boil」の「ドウブツ達の空」はひたすらノリのいい曲。なお、このライブアルバムはベスト盤的意味合いがあって有頂天を初めて聴くのにオススメします。パール兄弟「ブルー・キングダム」の「ZOO-ZOO-ZOO」もアルバムトップを飾る勢いのある曲です。エコーズ「Dear Friend」の「ZOO」カバーもされたバラードで、しんみり来るいい曲です。アルバム自体もどれもオススメです。