色彩の世界地図(21世紀研究会編・文春新書)感想

前回に続いての文春新書の世界地図シリーズです。世界の各地では色にどんな意味合いを持たせているのか、その元にどんな考えがあるのかを知りたくて本書を入手したのですが、この目的に関していうなら本書はテーマごとにまとまりすぎていた気がします。まず、目次を以下に記します。

 
第1章 東西南北にも色がある
第2章 国旗のなかの色彩の世界
第3章 聖書のなかの色彩地図
第4章 イスラーム世界の緑色
第5章 赤の語源は血!
第6章 青い血の謎
第7章 皇帝色、黄禍、そしてユダヤ人の色
第8章 白い世界と黒い世界
第9章 歴史のなかの色彩地図
色彩の小辞典

おおよそ目次のタイトルから本書の内容も推察できると思います。第9章は歴史に出てくる色に関する話をあちこちから集めたもので、系統立てて記した内容ではないです。「色彩の小辞典」は「英語に見る色に関係した言葉」と「故事・ことわざに見る色に関係した言葉」で、ともに色が出てくる言い回しについてまとめたものです。

本書を読んで思ったことをいくつか。P25に「天帝のいる場所は『紫微垣(しびえん)』とよばれるように、淡い紫色の光を放つ星座なのだという。」とあったので、日本の奈良時代にあった役所、紫微中台もそれにあやかってつけた名前かと思ったら、そちらは「中書省を改称した紫微省と則天武后の執政時代に尚書省を改称した中台に由来するもの」(ウィキペディア)とのことでした。

P106には、聖書とコーランの創造神話と共通した要素がそれらより古い古代エジプトの神話にもあることが書かれていて、こういう話が好きな私には思わぬ拾い物です。

P111のイスラームの死装束について語った箇所で、「戦闘などで死んで殉教者と認められた者は、生前に着ていた服を死装束としても神の祝福を受けれらる、と信じられている。こうした考え方があるので、自爆テロのような死が殉教とされている現状では、清浄な死装束をまとわず、死体が敵の手で処理されても、来世での至福が必ず約束される、ということになるのだ。」と書かれているのですが、それならそのときに生前に着ていた服を脱がして、(イスラームにとっての)清純ではない死装束を着せるようにすれば少しは自爆テロに躊躇するようになるだろうか、と少し想像しました。

本書は色についてのエピソードを集めた本です。私としては神話であるとか、あるいは民俗であるとか、各民族の歴史の中で培われた色に対する考え方を知りたかったので、近代の話が出てくるとそこに違和感が生じたりもしました。その種の話に触れると本当にきりがない気がするので、神話が息づいていた中世ぐらいまでで丁度いいのかな……というのが正直なところです。

とはいえ文章も読みやすく、興味がある話題も結構あったので、新鮮な知識に触れたくなったときの気分転換の一冊としてお勧めします。一通り読むのもいいけど気が向いたときに適当にページを開いて小見出しの箇所を読む、それでも十分に楽しめる本です。
 
 
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小品「小鳥の小躍り」です。
 

 

今回は文春新書の世界地図シリーズと色の本の特集です。