漢詩をたのしむ(林田愼之助著・講談社現代新書)感想

「国破れて山河在り」「春眠 暁を覚えず」……少しキーボードを打っただけで変換ソフトが候補に挙げてくれる便利な時代。そんな今の時代でも漢詩は楽しめることを改めて確認しました。今回は講談社現代新書の林田愼之助著「漢詩をたのしむ」を紹介します。今までで一番とっつきやすい漢詩の本でした。

 
漢詩には名文句が沢山出てきます。「歳月 人を待たず」「少年老い易く 学成り難し」(注・この二句は別の作者の別の作品からのものです)や「君に勧む更に尽くせ 一杯の酒」「一杯一杯復た一杯」のように聞くことの多いものから「春風に意を得て 馬蹄疾し 一日看尽くす 長安の花」「老鶴一声 山月は高し」「来るも亦た一布衣 去るも亦た一布衣」「独り寒江の雪に釣る」「天は蒼蒼たり 野は茫茫たり」「一架の薔薇 満院に香し」のように「どこかできいたことがあるような……?」と思えるものまで、この本にはそんないい調子の文句が沢山載っています。「朗吟して飛び下りる祝融峰」なんてのにはギョっとしました。それらを眺める……そう、読むというより眺めるだけで楽しいというのが一番に思ったことです。

また、紹介する漢詩が概ね短いのがいいところです。短いけど充分味わえる、といったほうが近いでしょうか。だから短い時間に一つ二つつまむように見ることも可能です。そして、五言・七言の絶句や律詩だけでなく他のタイプの詩もあるので新鮮な感覚も得られるでしょう。

なお、この本では紹介する漢詩には平易な文での訳と最小限の解説がついているので、かなりすんなりと漢詩の世界に触れることができます。あくまでも紹介・解説であって勉強や説教の類ではないのでとても読みやすかったです。

あと、人によっては音読する楽しみ方もあるのではないかと思いました。もちろん書き下し文のほうで、少し読んでみたのですが結構リズムよく読めて気持ちよかったです。

虫の声、鳴き声に触れた詩があったのでメモしておきます。楊万里の「夏の夜に涼を追う」(P225)という詩です。

惜しむらくは、この本が電子書籍になっていないということです。本当にいい本なのにな。講談社は是非本書を電書化していただきたいです。
 
 
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漢詩といえば大自然、私の場合はこの曲に。


「北海道にやって来た」歌は朱音イナリさんです。
 

 

今回は漢詩特集です。