知っておきたい日本の神様(武光誠著・角川ソフィア文庫) 感想とメモ

武光誠著「知っておきたい日本の神様」(角川ソフィア文庫)は神社や日本の神様、神道の一般的な知識について広く解説した本です。信仰の対象として日本古来から伝わる神社や神様に加え、徳川家康や軍神をまつる神社のような比較的今に近い時代のものや神仏習合によるものまで扱っています。

 
これ一冊あれば普通に暮らす分には神道に関することで困ることはないでしょう。神道に関する本が無かったら最初の一冊としておすすめします。範囲は広くても内容が浅いわけではなく、ある程度踏み込んだところまで説明しているので、ある程度神道に関する本を読まれた方でも新たな発見があるかもしれません。その意味でもご一読をお勧めします。

また、この本について神道的なものに心酔し翼賛的に語られているのではないかと懸念されている方もいるかもしれません。しかし、先に挙げた軍神をまつる神社の項目では「政府にとってつごうのよい『国民の手本とすべき人物』が神としてまつられるようになったのである。」(P.128)という文章があり、あくまでも神道的なものに入れ込むことなく、きちんと知識を伝えることに徹している印象を受けました。

以下に本書で扱っている主な項目と私的に覚えておきたい項目を列記しました。参考になれば幸いです。

・神社・神道の発祥からの歴史的経緯
・稲荷神社(宇迦之御魂神、秦氏、狐、陀枳尼天)
・八幡神社(海神、宇佐氏、鳩)
・天神社(菅原道真、牛)
・諏訪神社(鹿の頭、建御名方神)
・神明社(天照大神、天祖神社、伊勢神社、皇室)
・熊野神社(家都御子神(後に素戔嗚尊(スサノオ)と同一)、烏)
・大国主命(大物主神、大神神社(蛇)、出雲大社)
・八坂神社(素戔嗚尊、牛頭天王、蘇民将来)
・氷川神社(素戔嗚尊、奇稲田姫命、大国主命)
・事代主命(美保神社、恵比須)
・少彦名命(大洗磯前神社など)
・伊勢神宮と天照大神
・豊受大神(伊勢神宮・外宮)
・伊弉諾尊・伊弉冉尊(イザナギ・イザナミ、多賀神社)
・月読尊(月山神社)
・蛭児神(恵比須、西宮神社)
・三島神社(大山祇神、大山祇神社、阿曇氏、大三島神社、三島明神)
・鹿島神社(武甕槌神、中臣氏)
・香取神社(経津主神、中臣氏)
・春日神社(天児屋根命、中臣氏、藤原氏、武甕槌神、経津主神、比売神、鹿)
・猿田彦大神(椿大神社)
・天鈿女命(ウズメ、椿岸神社、車折神社)
・日吉神社(日枝神社、大山咋神、山王権現、猿)
・松尾神社(大山咋神、秦氏)
・貴船神社(高龗神)
・上賀茂神社(別雷神、鴨氏)・下鴨神社(玉依姫、建角身命、鴨氏)
・石上神宮(布都御魂神、物部氏)
・住吉神社(底筒男命、中筒男命、表筒男命、津守氏)
・熱田神宮(熱田大神、草薙剣、宮簀媛命)
・愛宕神社・秋葉神社(迦具土神)
・日本武尊(鷲神社、花園神社)
・神功皇后(八幡宮、宇佐八幡宮、応神天皇、比売神、香椎宮、聖母大菩薩)
・吉備津彦命(吉備津神社、吉備氏)
・武内宿禰(葛城氏、蘇我氏、高良玉垂神、高良大社、宇倍神社)
・野見宿禰(土師氏、菅原氏、穴師坐兵主神社、野見宿禰神社)
・防府天満宮(菅原道真、天穂日命、天夷鳥命、野見宿禰、土師氏)
・平将門(神田明神、大国主命、少彦名命)
・柿本人麻呂(春日氏、柿本神社(島根県益田市、兵庫県明石市))
・崇徳上皇(白峯神社)
・徳川家康(久能山東照宮、日光東照宮、東照大権現)
・平安神宮(桓武天皇、孝明天皇)
・織田信長(建勲神社)
・本居宣長(本居神社)
・明治神宮(明治天皇、昭憲皇太后)
・靖国神社
・広瀬神社(広瀬武夫)
・乃木神社(乃木希典)
・東郷神社(東郷平八郎)
・大黒天(大国主命)
・弁財天(市杵嶋姫命、田心姫、湍津姫、厳島神社、平氏、銭洗弁天、江島神社、蛇)
・妙見社(北極星崇拝、北辰菩薩、妙見菩薩、陰陽道、玄武、北斗七星、千葉家(房総半島)、大内家(周防)、相馬家(陸奥)、秩父神社)
・金毘羅神社(象頭山、クンピーラ神(十二神将))
・荒神社(三宝荒神、如来荒神、鹿乱荒神、忿怒荒神、密教)
・三峰神社(犬神、伊弉諾尊・伊弉冉尊)
・富士山(木花開耶姫、浅間神社、箱根神社)
・白山(白山比咩神社、菊理媛神)
・阿蘇山(阿蘇神社、健磐竜神、阿蘇氏)
・天皇家と神道(首長霊信仰、大国主命、天照大神)
・神道の教え
・農村(都市)と神の祭り(氏神)
・分社・外国分社
・寺と神社の関係(神仏習合・神仏分離)
・北野天満宮(菅原道真、多治比文子、太郎丸、最珍)
・神棚・お参り・(大生部多)・年中行事など
・社寺詣で(お伊勢参り・金毘羅詣で・富士登拝(大日如来・宣言大菩薩・役行者)・七福神めぐり)
・神系図・御利益別神社一覧

個人的なポイント
P139 中国文化を受け入れる前の日本に、星をまつる信仰はみられない。

本記事は告知なく加筆・修正する場合があります。ご了承願います。

これをまとめているときに、今頃イエス・キリストが三日後復活した話と天岩戸の話(天照大神の復活)が似ていることに気がづきました。或いは、太陽神の復活話自体が世界中にたくさんあって、キリストの復活もその1パターンと考えたほうがいいのでしょう。もう誰か類似性とか色々調べているのだろうなあ。
 
 
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今回は落ち着いた曲をどうぞ。


「Enfance finie」歌は冷声ゼロさんです。
 

 

以下は日本神話の本の特集です。

※「名字と日本人 先祖からのメッセージ」(文春新書)は同著者の本。分かりやすかったのでこちらもおすすめします。新マンガ日本史 創刊号「ヤマトタケル」の漫画は和月伸宏先生です。